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2009/12/22 (Tue)
SIGGRAPHにおける富野氏の演題は「Ring of Gundam :No Hints for Creation in Your Manuals」
(リング・オブ・ガンダム:マニュアルに創作のヒントはない)と題されており,まさにそのタイトル
どおりの講演が行われたといっていいだろう。

今回の講演は,Ring of Gundamの制作プロセスをRobotの西井育生氏が解説し,その後,
富野由悠季監督が大いに語るという構成で行われた。最先端のCGアニメーション作成の現場が
どのように運営され,また富野監督がそこから何を創りだそうとしたのかを紹介していきたい。

■ 次世代の新しいアニメーション表現の模索

まず最初にCG担当の西井氏は,Ring of Gundamは次世代の新しいアニメーション表現の
模索である,と語った。ざっくばらんにいってしまえば,次世代スタンダードを生み出すための
実験であるということだ。では実験であるから,制作体制もまた実験らしい小規模なもので
あったのかというと,まったくそういうことはない。

Ring of Gundamは,サンライズとRobotおよび外部チームが共同して行う初めての企画であり,
ここには片手の指を超える企業や団体が関わっている。

Ring of Gundamの大きな特徴は「富野監督作品である」ということであり,それはつまり
ドラマ性を重視するということだ,と西井氏はいう。このため,作品の舞台となる背景世界は
設定レベルまでしっかりと煮詰められており,ドラマの中心的存在となるキャラクターやメカに
ついても討論が繰り返されている。

とくに興味深いのは,キャラクターのアニメーションの制作過程である。
Ring of Gundamではモーションキャプチャは採用されなかった。その代わり,実際に
舞台役者を起用,彼らにシーンを演じてもらい(当然ながら富野監督が演技指導もする),
この実写映像から手でアニメを起こすという作業が行われている。

これについて西井氏は,「モーションキャプチャという技術はとても優秀になってきたが,
絵コンテおよびプリビジュアリゼーションにおける監督の拘りを実現するには,モーション
キャプチャでどんなに頑張っても難しかった。キャラクターへの思いが乗っていかない」と語った。

ロボットの動きや効果についても新しい試みが行われている。
動きについては,まずモビルスーツの兵器としての位置を再確認することから始まっている。
モビルスーツは物語の中では空を飛ぶ兵器として運用される。その,空を飛ぶという,
戦闘機のような軽さを感じさせるのが,一つの指針であった。そのうえで,人間型兵器の
動きとして,トップアスリートのような美しく無駄のない動きが意識されているという。

また,噴射の炎や爆発といった効果に関しては,これまでのアニメーションや映像作品の
なかで一種の記号として用いられるようにすらなっている定番の表現を見直し,実際の
ロケットエンジンや核爆発などをベースとした表現が行われている。

総じていえば,Ring of Gundamは,3DCGアニメーション制作の現場にとっても,また富野監督に
とっても,互いに何ができて何を目指し得るのかを確認し研究しあう,文字どおり実験の
場であったようだ。そしてそれこそが「次世代の新しいアニメーション表現の模索」という
目標の実現であったといえるだろう。

4Gamer.net(一部抜粋)
http://www.4gamer.net/games/103/G010304/20091221034/
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